【ライブ記録】THE BACK HORN 25th Anniversary「KYO-MEIワンマンツアー」〜共鳴喝采〜@20231116 札幌PENNY LANE24

THE BACK HORN
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例によって、行ける限り行けるところへ足を運ぼうと計画を立て、札幌、青森、盛岡を3泊4日で周遊することを決めたのは夏のこと。もちろん最大の目的は、札幌と盛岡で行われるTHE BACK HORNのライブである。青森は、何かにつけて行きたい場所なので、行くこと自体が目的の小休止だった。

天気はどこも連日雨、雨、雨。THE BACK HORNは雨を引き連れてくる、というのはおそらく自他認める話だが、自分自身も雨を引っ提げることが何かと多い。偶然にちがいないが、滅多に出かけないにもかかわらず出かける日に限って雨天が続くと、結構笑えてくる。言うまでもないけれど、雨でももちろん楽しかったよ。どこもあまり寒くなかったし。

灯台下暗しも甚だしいが、今更ながら国内の魅力に気付く。ようやく、気付くことができてよかった。国内外ともに地図を見ないで歩ける街が増えるとうれしい。ズンズン、いろんなところを歩きたい。

振り返れば、国内の様々な場所を訪れようと思うようになったのは、ライブの存在があったからにほかならない。ライブにかこつけて今では様々な場所に足を運ぶようになったが、国内を巡るようになったのはここ2、3年のことである。

学生時代に2年ほどドイツに滞在していた私は致し方なく欧州かぶれを最大限極めてしまったので、言わずもがな国内にはほとんど目を向けたことがなかった。その余波やコロナ禍もあって、国内を巡るということは自ずと意識にはのぼらなかった。そうしたなかで、決定的な契機が訪れる。2022年夏、四国にTHE BACK HORNを見に行ったことである。

あのとき、全てを投げ出したつもりで有休を取得したことを憶えている。まさに「なんとかなれー!」の精神で、どこか遠い場所に足を運ぼうと決めた。コロナ禍も相俟って、物理的にも精神的にもどこにも行けなかった状態を打破したかった気持ちも強かったのかもしれない。

当時の自分からしてみれば、あのときの選択がここまで後を引くとは思いもしなかった。今だって我ながらファインプレーを積み重ねたとしみじみ思う。

とはいえ、今となっては何が正解だったか腑に落ちる節もあるけれど、選択を迫られているときには〈これが正解だ!〉と思えないことがいくらでもある。思えば、選択のさなかにいるときはどちらが正解なのかたいていは判然としない。精神論だとしても、自分が選んだ選択肢や行動してきたことを正解にするほかないとすら思う。

人それぞれの選択の仕方があるなかでも大切なのは、判断基準を明確に持つ、ということではないだろうか。私が選択するときに重きを置くのは、未来にどんな作用があるかよりも、むしろ目の前に対峙する現実をより心地よく過ごせる道はどちらなのか、ということである。

刹那的にしか生きてこなかった私は、刹那的なイマココの快適さを貪婪に求めている。より心地よいほうを嗅ぎ分け、結果として心地よい方に向かおうとしながら今を形作っているのだとしたら、誰しもに当てはまる方法ではないとしても、少なくとも私にとっては、あながち間違った判断方法ではなかったのだと思う。

あのとき投じた一石は、瞬時に波紋を広げるにはあまりにもささやかだったかもしれない。が、今になって分かるのは、あのとき投げた一石が、確実に今を形作っている一手になった、ということである。遅効性の一石は、未来の自分を救うための一手だったのだと、今では強く感じる。

あの日を起点にした先につながったのは、2023年11月16日札幌でのライブも例外ではない。いろんな特別が折り重なったうえで見る大好きなバンドのライブを、最高と称するほかに何と形容したらよいだろう。

名状しがたい感動が全身をめぐる。音楽が突風のように心を突き抜けて、抜け殻のようになった自分が忽然と取り残される。整理がつかない気持ちを携えながら私は夜に溶けた。

不意に思い出したのは、組まれたセットリストのこと。今回のツアーで私が訪れたのは札幌公演で3回目を迎えるが、1度たりとも同じセトリではなかったことにハッとする。

固定されている楽曲ももちろんあるけれど、日によって違う曲がところどころ装備されているようである。つまり、セトリ一つをとっても、完全にその日限りのライブが繰り広げられているということだ。

あまりにも、幸。もはや多幸感に生き埋めになる。

ただでさえ普段とは異なる場所でライブを見るのだから、それだけでも十二分に気持ちは高まる。初めてのライブハウス、初めて訪れる場所、未知の世界でなじみ深い曲を堪能するという経験。君、演者よりも緊張しているよ、なんて友人に笑われるくらい、私の心は忙しなく動く。幸い笑い話で済んでいるが、血圧が高まりすぎて色々ブチ切れないか、実はそれなりに心配していたりする。

さて、超絶技巧を間近で凝視した私は、「ひとりごつ」を聴くちいかわさながら「ワァ…」と見入ってしまった。特等席で拝むすべてが尊さの極みにほかならなかった。

すべてが至福というほかないのだが、とりわけ噛み締めたいのは、繰り返しになれども「出会えて良かった」という言葉である。

この言葉を耳にするとき、飾り気も混じり気もない純度の高さのあまり、正直に言って面映さに包まれる。こんなにも尊い言葉を受け止めるには、覚悟が必要と言ってもいいかもしれない。有り体に言えば、幸せになる覚悟とか、そういう類の覚悟が。

真っ直ぐに放たれる一糸纏わぬ言葉に息を呑む。そんな言葉をライブで聴けるって、どれだけうれしいことなのだろう。これだけ切実な響きを伴って胸に迫る言葉にはそうそう出会えまい。

私たちの胸に響く言葉は、同じ響きを携えながら私たちの心のなかから発せられることもあるにちがいない。語られた言葉を繰り返すのは、たしかに単なる反復に思われるかもしれない。が、このときばかりは、紛れもなく己の言葉に己の熱が宿っていると思えてならない。

「出会えて良かった」と、たしかな温度と質量を携え、放った矢のように一心に向かう先、そこに光がある。命が宿った言葉はたしかな鼓動を打っていた。

情報量の多さに受け止めきれない感情も噛み砕けない想いもあったけれど、少しずつでも血肉と化してくれるはずだ。膨大なエネルギーや愛の総体を受け止めること、幸せになる覚悟をきめるのは、そうしたところから始まっているにちがいない。

以下、たよりにならないセットリスト。1曲足りないよね?(最後の2曲はアンコール)

セットリスト
  1. サニー
  2. 希望を鳴らせ
  3. 悪人
  4. フェイクドラマ
  5. コワレモノ
  6. ひょうひょうと
  7. ヘッドフォンチルドレン
  8. 晩秋
  9. 最後に残るもの
  10. 空、星、海の夜
  11. グローリア
  12. コバルトブルー
  13. 太陽の花
  14. 無限の荒野

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