【ライブ記録】THE BACK HORN「KYO-MEIワンマンツアー」〜Dear Moment〜@20250524 仙台Rensa

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胆力、気力、生命力。これらの単語全てが山田将司を表す言葉にふさわしかった。片足を椅子に乗せながらも、そうとは思わせないくらいに逞しく歌う姿。光の中に見えるその光景に、胸を打たれずにはいられなかった。

これまでのツアーと同様に、仙台公演もアンコール含めて22曲。時間にして2時間弱。全力という言葉を乱用するのは憚られるけれど、どう見積もってもそれは全力というにふさわしいパフォーマンスだった。

どうにかして、生きている証拠を刻もうと剥き出しになってぶつかり合うライブは、THE BACK HORNならではの火花にほかならない。まさにライブ。生きていることを痛感するきっかけがあるとすれば、たぶんそれは私にとってTHE BACK HORNのライブがその一つだ。

生きることに直結するといえば、個人的にTHE BACK HORNあるあるとして感じていることがある。それは、THE BACK HORNを好きだと自己肯定感が上がる、ということだ。とはいえここで〈自己肯定感〉とだけ表現するのはいささか胡散臭いので、もう少し私の考えに即して言葉を当てはめてみようと思う。

私がここで言う〈自己肯定感〉とは、これまでの過去に対する肯定という意味に近い。それはTHE BACK HORNと出会えたことへの感謝であり、ものすごく生意気な言い方をすれば、彼らを見つけた自分への称賛でもある。

出会えてよかったと心から思えること、心から好きだという気持ちを繰り返し噛みしめること。そういう当たり前の営みが、知らず知らずのうちに私自身の歩みを認めることにつながっていたのだと思う。

THE BACK HORNの音楽を聴く。その積み重ねは、彼らの音楽や彼ら自身を好きになることでもあって、自分自身の心を耕すことでもあった。これは、費やした時間や労力、動いた心の数々があったからこその鉱脈であることはたしかだろう。

紐解けば大仰な物言いになってしまったが、有体に言えば好きなことを好きなだけしていただけのことである。こうした境地に至るなどとは考えが及ぶわけもない。彼らと出会えただけでも有難いご縁なのに、自分のこれまでの人生を丸ごと肯定したくなる気持ちが芽生えるなど、思いがけない副産物にも驚くばかりである。

もちろん、THE BACK HORNに出会った以外にも人生には色々なことがあって、それら全てを肯定できるわけではもちろんない。後悔も数えるくらいなら持ち合わせている。それでも、総じて正解!間違ってなかった!なんて軽やかに思えてしまうエネルギーをTHE BACK HORNは放つ。それに、数え切れないほど支えられてきた。

だから、そういう意味でも、やっぱりTHE BACK HORNは特別な存在だ。

思えば、ライブに行くたびに何かしらの発見があるのは感慨深い。たとえそれがこれまでのライブと同じセットリストであろうと、その日に見る光景も、感じることも、どれもが初めてであることにハッとさせられる。

コバルトブルーの轟音のさなか、演者と観客とがぶつかり合って散る火花を目の当たりにした。「俺達がいた事を死んだって忘れない」1という歌詞がやけに突き刺さる。この部分を聴いていたのはほぼ一瞬の出来事であるにも関わらず、どうしたらそれができるのか。「生きた証を刻む」1ために、私は何ができるのか、考えずにはいられなかった。

「生きる」ということも「生きた証」というのも、単に字面で見てしまうと、ともすると薄っぺらい印象を残しやすい。それでも、彼らのライブを観ていると、不思議なほどにその言葉に宿る熱と重みを感じる。

たぶん彼らは本当にそう思っている。本当にそう思って言葉にしている。パフォーマンスの一環で、形骸化された言葉を発するのではない。射貫く矢のように、真っ直ぐな言葉を放つから、心が動く。少なくとも私はそう感じている。

「生きた証を刻む」。今の私には、この言葉は重すぎる。そこまでの覚悟があるとは到底思えないし、この問いについて切実に考えたことは無いからだ。たしかに限られた時間のなかで何を残せるのだろう、と繰り返し問うことは増えた。しかしそれは自発的に、というわけではなく、THE BACK HORNがそう歌うから、自ずと関心が向かった結果と言える。

何を残したいか、そもそも残したいものはあるのか、問題はそこから始まる。今の私にとってそれはおそらく、感動を言葉に残すことだと思う。ほかの誰のためでもなく、ただ自分のために、残し続けることだと思う。

それがライブという契機によって紡がれていくのだとすれば、それはまぎれもない生命活動の一環だろう。

なんとしてでも歌おうとする山田将司の姿だとか、彼に肩を貸しながら岡峰光舟や菅波栄純が一緒に歩いてステージを去るところとか、ライブでしか見ることのかなわない光景が断片的に残っている。

悪あがきに等しいけれど、幸せな光景をどうにかして残してやろうという算段を立てている。

セットリスト
  1. 親愛なるあなたへ
  2. Running away
  3. Mayday
  4. 暗闇でダンスを
  5. 透明人間
  6. コワレモノ
  7. ジャンクワーカー
  8. カラス
  9. 修羅場
  10. 光とシナジー
  11. ヘッドフォンチルドレン
  12. Sun goes down
  13. 月夜のブルース
  14. 最後に残るもの
  15. 未来
  16. グローリア
  17. 戦う君よ
  18. 太陽の花
  19. コバルトブルー
  20. タイムラプス
  21. 刃(EN.1)
  22. 明日世界が終わるとしても(EN.2)
  1. 菅波栄純「コバルトブルー」、2004年[][]

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