故郷でTHE BACK HORNを観ることは、私にとってものすごく特別なことだ。地元に彼らが来るから、というのもある。が、それ以上に、地元でのライブしか行くことができなかったときに、ここだけのライブを何よりも楽しみにしていたことも思い出すからだと思う。
だから私はこの日のライブが始まる前から、文字通り童心にかえっていた。
思い出すのは、高校生のときに、乗り慣れない電車を乗り継いではじめてのライブハウスに行ったこと。緊張しながら、ライブのためだけに時間やお金をかけて目的地に赴いた経験というのは、思っている以上に、その対象のことを大切に思わしめる効能があるようだ。そういえば、『星の王子様』でもそういう一節があったはずだ。
一時間に一本あるかどうかの電車に乗って緊張しながら会場に向かう。私はそうした体験を、同じ電車に揺られながらもう一度思い出していた。こうしてまた、記憶はかけがえのない思い出になっていくのだろうし、彼らに対しての熱もたしかなものになっていくのだと思う。
さて、私にとって3公演目だった長野公演。この公演を観て感じたのは、あまりにもあたたかかったということだ。彼らの演奏や言葉は言うまでもないが、それよりもむしろ、会場の熱や想いとでも表現できるかもしれない。「待っていたよ!!!!」と心の叫びをあげる会場とそれに応えるTHE BACK HORN、という構図にたしかな手ごたえを感じるほど、まるで会場全体がTHE BACK HORNと意思疎通を取っていたライブと言っても差し支えないように思えた。
それから、目の前で怒涛のように繰り広げられている情景が、まるでスローモーションのように見えたことは感慨深い。3公演目ということもあってか、これまでの公演以上に全体がよく見えた気がした。
例えば、「グローリア」、「戦う君よ」、「太陽の花」、「コバルトブルー」という怒涛の楽曲たちが畳みかけられているにも関わらず、ステージがよく見えて、歌もよく聞こえた。コバルトブルーで号泣してしまったのは自分としても意外ではあったけれど、この〈今〉という一瞬がとてつもなく愛おしくなったことの証左でもあろう。
とくに印象的だったのは、「最後に残るもの」が終わったあとに拍手が鳴りやまなかったことだ。本当に心から楽しみにしている、という観客たちの気持ちが私自身にもビリビリと伝わってきた。そして、故郷にTHE BACK HORNを心待ちにしているひとたちがこんなにもたくさんいるということもうれしい事実だった。
MCのときに岡峰さんが「長野、いい雰囲気ですね」としみじみ言っていたことが繰り返し思い出される。THE BACK HORNは1回1回のライブに真摯に向き合っている。それは間違いないことではあるとしても、長野公演では、待ちに待っていました!という観客たちの圧も相まって、猛烈な引力でお互いが引き合うような手ごたえをいつも以上に感じた。目と目が合って火花が生まれるときのようなヒリヒリとした感覚を覚えたのだ。
同じ曲順であっても、その時々によって雰囲気は大きく様変わりすると思う。例えば「明日世界が終わるとしても」の歌詞にある「光の中で幸せになれ」という部分。この部分を歌う山田将司の表情は、少しだけ微笑んでいたような気がする。しかも彼は会場に向かって手を差し出していたこともあって、いつも以上に胸に迫るものがあった。
またもや意図せず泣いてしまった。「幸せになれ」という言葉を放つひとたちが歌う歌を聴けるということ、それ自体がすでに幸せの真っ只中にいることにほかならない。単なる歌かもしれない。歌詞の一節かもしれない。それでも、私たちの幸せを願ってくれるひとがたしかに存在していることを、繰り返し銘記したい。きっとそれは、ここぞというときに自身の心を支えてくれるような光として、つまり希望として刻まれることになるだろうから。
思えば、今回のライブでは、「色々ある」という言葉が発せられていた。この言葉はあまりにも端的ではあるものの、「色々ある」と一言で語られる色々が容易に紐解けないもので、どうにも収拾がつかないものであることは想像に難くない。そういう色々を抱えたうえで、それでもなお光を信じ希望を見定める姿は、健気でたくましいものだと思う。そうした精神が欠片でもいいから私自身にも根付いていてほしいと願うばかりである。
何はともあれ、あまりにも素晴らしいライブを体感した。私がこれだけの力を受け取ったように、何かしらの力を彼らにも返すことができていたら、このうえなくうれしい。次はナッシングストの対バンで再び長野!楽しみ!
- 親愛なるあなたへ
- Running away
- Mayday
- 暗闇でダンスを
- 透明人間
- コワレモノ
- ジャンクワーカー
- カラス
- 修羅場
- 光とシナジー
- ヘッドフォンチルドレン
- Sun goes down
- 月夜のブルース
- 最後に残るもの
- 未来
- グローリア
- 戦う君よ
- 太陽の花
- コバルトブルー
- タイムラプス
- 刃(EN.1)
- 明日世界が終わるとしても(EN.2)
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